邑遊自適~好蟻性的俺~

昆虫(アリ・ハチ)を中心に綴っていく日記. コメントやリンク大歓迎です (リンクの際はご一報ください).本ブログに掲載の物事はほとんどが未発表のものであり,報文・論文への引用は固くお断りしております.引用が必要な際は状況により情報を提供いたしますので,メッセージにてご連絡くださいませ.画像の無断転載はお控えください.当ブログの管理人および記事に登場する人物は実在の人物とは基本的に無関係です.当ブログの運営に関する御意見はブログ内でのみ受け付けます.ご了承ください.

現在、自己採集した日本産アリ類(2014~)は197種(雌124種,雄75種)!!! 全てのアリをこの目に焼き付ける!!!

カテゴリ: アリ

本題にとびたい人は目に悪そうなこの色が見えるまで頑張ってスクロールしよう(ただし業者および飼育屋は必ずすべての文章に目を通すこと)

本記事はアリ好きのために書き連ねるものであり有象無象の販売業者の同定を手助けするものではありません.そのあたりを業者はき違えぬよう,決して同定に利用しないよう気を付けて直ちにこのページから去ること.不遜な業者および飼育屋による本記事の利用が判明した場合は即刻公開を中止します.

私がアリ好きからアリ好きのハチ屋になってからはや7年,もう諦められたのかアリいじりを咎められることも少なくなった.むしろ武器として使うべきというお言葉もいただいたりした.事実,世間の役に立っているとは思わないが研究室の先輩同輩後輩,また別の在野の方などに直接的間接的にアリを扱う人が増え,(ごく表面上ではあるが)アリを扱えるということで声がかかることが随分増えた.ありがたいことである.昔はあんなにアリをやるなやるな言っていたのに,今更になってあれはなんだこれを教えろ等知識を要求してくるとは何事だ,と心ばかりの抵抗をしはするものの,本心では喜んでいる.
とはいえ毎度毎度同じことを教えるのは出来の悪い教師の授業であって教育ではない.同じことを言う手間を省けるようにいくつか“よくある質問”を綴っておくことにしよう.学術的な論文じゃない,主観ばかりで役に立たないかもしれない,素人だから同定が合っているかもわからない,ただのアリ好きの限界博士学生の気晴らしの場である.

ーここから本題ー
今回はアメイロケアリ亜属の2種.アメイロケアリ(Lasius umbratus)とヒゲナガアメイロケアリ(Lasius meridionalis).むかーしはワーカーでは同定できないと言われていたものの,もう10年以上前にワーカーによる区別点が示されて以降は両方揃えていれば分かりそうな気がするもの程度にはなったのではないだろうか.
両者(と思われるもの)の写真をそれぞれ出した後,ざっと並べてみる.
まずアメイロケアリ.
Lasius umbratus
Lasius umbratus-H
Lasius umbratus-Scape
次にヒゲナガアメイロケアリ.
Lasius meridionalis
Lasius meridionalis-H
Lasius meridionalis-Scape

では比較.
umbratus-meridionalis
全身.色はあてにならない気がする.少なくともこうだと言えるほど標本を見ていない.
umbratus-meridionalis-H
頭部正面.一応この角度でも触角の形態で見分けはつけられるが,慎重に触角を吟味すべき.正面から見て,触角柄節長は頭部最大幅と比べるとこんな感じ.ヒゲナガの方が長い.
触角にほんとうに違いが出るのか,付け焼刃ではあるがSI(柄節/頭幅×100)を示しておく.
アメケ
87.0-88.4 (中央値: 88.2) (n = 3)
ヒゲアメ
91.0-95.0 (中央値: 91.6) (n = 4)
umbratus-meridionalis-Scape
さて問題の毛.アリの毛は透過光を使うと見やすい.アメケの柄節にはほとんど立毛がない.あっても数本でどちらかというと完全な立毛(erect setae)よりもちょっと斜めの立毛(suberect setae)といった感じ.一方ヒゲナガアメケはバラバラとかなり立毛がみられる.

単純だがこんなところ.両種を並べた写真がggってもパッと出てこないのが不思議だ.訊かれる度によいしょとスマホを出してスワイプしながらぶつぶつ喋るよりもこれを見ていただいた方がよほど容易い.

上にあるようにアリに関して好意的に手助けするつもりが嫌な思いをすることも少なからずであったが,良い資料が現れるまでの間,少しでもここがどこかの誰かの役に立てば,という思いであえてTwitterではなくてここに綴ることにする.長文失礼いたしました.

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※業者お断り!回れ右!

昨今の深度合成写真はかなり詳細なところまで写って最早現物を見ずともそのものを理解するに十分な情報を備えていますが,逆に綺麗すぎて軽く同定したいとき,そこいらの顕微鏡でディフューザーなしに覗いたときの姿とだいぶ剥離してきています.パッと見たときどういう印象か,それが分かるのもまた理解と効率化の一歩.
ということで今回はナンヨウシワアリ以外揃った日本産シワアリ属(Tetramorium)を並べてみました.

A. オオシワアリ Tetramorium bicarinatum
B. ケブカシワアリ Tetramorium kraepelini
C. イカリゲシワアリ Tetramorium lanuginosum
D. キイロオオシワアリ Tetramorium nipponense
E. サザナミシワアリ Tetramorium simillimum
F. カドムネシワアリ Tetramorium smithi
G. トビイロシワアリ Tetramorium tsushimae
Tetramorium_Japan
Tetramorium_Japan2
Tetramorium_Japan3

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先日,帰省して佐賀に家族旅行に出かけた.

せっかくなのでと近くの山に登って篩いをしたが,これがもう乾燥しっぱなしでぜーんぜん虫がいなかった.

なんとか見栄えのするやつは,これくらい.
Vollenhovia benzai
嗚呼,なんと地味な虫か.これはフタフシアリでもマイナーな属,ウメマツアリの仲間のタテナシウメマツアリ(Vollenhovia benzai)だ.
体長約2 mm.少し赤っぽく,マットな彫刻で特にこれといった特徴がない.しかし,関西より西の約10県ほどでしか見つかっていない地味に見られない種だ.南に行くほど多く,福岡や佐賀では普通に見られる.私は愛媛では採集したことがないが,福岡では篩うと毎回のように採れ,この間は大学のキャンパス内で採った.
近縁のウメマツアリ(V. emeryi)は朽木の中や樹皮下に巣を作りその周辺でしか見つからないのに対し,本種は土の中に巣をつくりリターからよく得られる.西南日本のリター篩いでウメマツを採ったら,こいつかもと疑うべし.
Vollenhovia benzai2
本種の特徴はココ.近縁のウメマツアリでは大きく発達する板状の腹柄下部突起がないかほとんど発達しない.和名はこの板状突起を盾とし,それがないという意味で付けられたのだろう.

さて,書くことがもうない.地味な種の宿命,書くことがないのだ.生態写真がネット上にほとんどないので,皆さんぜひ採集して美麗な写真を上げていただきたい.
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ハチ会議の一週間前,実家に帰って採集に出かけた.ハチ屋らしくハチばかり採ったが,集中していて写真をほとんど撮っていないので撮影しやすい数が多くて動きのとろいアリさんたちをご紹介.
Strumigenys lewisi2
シフティングの常連,ウロコアリ(Strumigenys lewisi).こいつが採れなきゃ篩ってないも同然,良い採集地では必ずといって良いほど見られる.ハート形の頭に長い大腮が生える.小さくても造形は一級品のかっこいいアリ.
Strumigenys canina
同じくウロコアリ,ヒラタウロコアリ(Strumigenys canina)の女王.たいそうな扱いを受けることもあるが,西日本のちょっとした低地の林では普通.よく見ると盾みたいな顔がかっこいい.
Crematogaster nawai
低草本を歩き回るのはツヤシリアゲアリ(Crematogaster nawai).地上を徘徊するイメージが強いが,ちょっとした高さの草木なら登るようだ.大きいしツヤツヤしててかっこいい.

場所を変えて,河原.
Lasius yokuwakaranensis
ケアリ亜属の何か(Lasius sp.).カワラケにしては毛が少ないような…でもここではちゃんとしたカワラケも採れてるし……よーわからん!
Solenopsis japonica-major
トフシアリ(Solenopsis japonica).あのヒアリと同属だが,小さいし針は刺さらない.2型あって,こいつは大型の方.林内ではあんまり外を出歩いている姿は見ないが(見えない),河原だとトコトコ目立つところを歩いている.

最後に駅前の花壇.
Nylanderia amia2
ケブカアメイロアリ(Nylanderia amia).外来アリ.漆黒の体をしていてよく見ると太い毛がたくさん生えている.動きはめっちゃ早い.本来見つかってはいけないアリ.アメイロの中では大きいし真っ黒つやつやでかっこいい種ではあるんだが….


地元の中途半端な田舎でも,場所を変えればいろんなアリに出会える.いつも珍な人たちばかりを血眼になって探しているが,たまには普通種とのんびり過ごすのもいいかもしれない.
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夏がやってきて,自販機やビニコンも賑わってきた.
Camponotus vitiosus-female
よく見る大きなアリ.ウメマツオオアリ(Camponotus vitiosus)のメス.
Brachyponera chinensis-male
黄色くてハチみたいなやつ.オオハリアリ(Brachyponera chinensis)のオス.メスより圧倒的に見かける気がする.6月ぐらいから9月くらいまでダラダラ見られる.
Chthonolasius-male
●●アメイロケアリ(Lasius sp.)のオス.大腮が開いてたから分かると思ったけど写真じゃ無理だった.標本見た後ちゃんと書きます.翅の根元が黒い.アメケとクサアリはオスメスともにこんな翅なので,ただのLasiusと混じってても一見して分かる.
Colobopsis nipponica-female
ヒラズオオアリ(Colobopsis nipponica)のメス.大型ワーカーが頭で巣に蓋をすることで有名だが,メスも同じく裁断されたような顔面を持つ.
Colobopsis nipponica-male
同オス.オオアリと違って梗節がボコっとして目立つ.アリの梗節は鞭節と変わらない見た目のものが多いけど,コイツ含め一部はちょっと違う形をしている.そういうとこ含め夏に灯火で見られるアリではオオズのオスにちょっと似てる.

このページはそれっぽい種のそれっぽい写真が撮れたら随時追加しようかな.
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