本題にとびたい人は目に悪そうなこの色が見えるまで頑張ってスクロールしよう(ただし業者および飼育屋は必ずすべての文章に目を通すこと)
本記事はアリ好きのために書き連ねるものであり有象無象の販売業者の同定を手助けするものではありません.そのあたりを業者はき違えぬよう,決して同定に利用しないよう気を付けて直ちにこのページから去ること.不遜な業者および飼育屋による本記事の利用が判明した場合は即刻公開を中止します.
私がアリ好きからアリ好きのハチ屋になってからはや7年,もう諦められたのかアリいじりを咎められることも少なくなった.むしろ武器として使うべきというお言葉もいただいたりした.事実,世間の役に立っているとは思わないが研究室の先輩同輩後輩,また別の在野の方などに直接的間接的にアリを扱う人が増え,(ごく表面上ではあるが)アリを扱えるということで声がかかることが随分増えた.ありがたいことである.昔はあんなにアリをやるなやるな言っていたのに,今更になってあれはなんだこれを教えろ等知識を要求してくるとは何事だ,と心ばかりの抵抗をしはするものの,本心では喜んでいる.
とはいえ毎度毎度同じことを教えるのは出来の悪い教師の授業であって教育ではない.同じことを言う手間を省けるようにいくつか“よくある質問”を綴っておくことにしよう.学術的な論文じゃない,主観ばかりで役に立たないかもしれない,素人だから同定が合っているかもわからない,ただのアリ好きの限界博士学生の気晴らしの場である.
ーここから本題ー
今回はアメイロケアリ亜属の2種.アメイロケアリ(Lasius umbratus)とヒゲナガアメイロケアリ(Lasius meridionalis).むかーしはワーカーでは同定できないと言われていたものの,もう10年以上前にワーカーによる区別点が示されて以降は両方揃えていれば分かりそうな気がするもの程度にはなったのではないだろうか.
両者(と思われるもの)の写真をそれぞれ出した後,ざっと並べてみる.
まずアメイロケアリ.次にヒゲナガアメイロケアリ.
では比較.
全身.色はあてにならない気がする.少なくともこうだと言えるほど標本を見ていない.
頭部正面.一応この角度でも触角の形態で見分けはつけられるが,慎重に触角を吟味すべき.正面から見て,触角柄節長は頭部最大幅と比べるとこんな感じ.ヒゲナガの方が長い.
触角にほんとうに違いが出るのか,付け焼刃ではあるがSI(柄節/頭幅×100)を示しておく.
アメケ
87.0-88.4 (中央値: 88.2) (n = 3)
ヒゲアメ
91.0-95.0 (中央値: 91.6) (n = 4)
触角にほんとうに違いが出るのか,付け焼刃ではあるがSI(柄節/頭幅×100)を示しておく.
アメケ
87.0-88.4 (中央値: 88.2) (n = 3)
ヒゲアメ
91.0-95.0 (中央値: 91.6) (n = 4)
さて問題の毛.アリの毛は透過光を使うと見やすい.アメケの柄節にはほとんど立毛がない.あっても数本でどちらかというと完全な立毛(erect setae)よりもちょっと斜めの立毛(suberect setae)といった感じ.一方ヒゲナガアメケはバラバラとかなり立毛がみられる.
単純だがこんなところ.両種を並べた写真がggってもパッと出てこないのが不思議だ.訊かれる度によいしょとスマホを出してスワイプしながらぶつぶつ喋るよりもこれを見ていただいた方がよほど容易い.
上にあるようにアリに関して好意的に手助けするつもりが嫌な思いをすることも少なからずであったが,良い資料が現れるまでの間,少しでもここがどこかの誰かの役に立てば,という思いであえてTwitterではなくてここに綴ることにする.長文失礼いたしました.