邑遊自適~好蟻性的俺~

昆虫(アリ)を中心に、たまにしょうもない趣味を綴っていく日記。 笑いなしオチなしでの~んびりやっとります。コメントやリンクも大歓迎です(リンクの際はご一報ください)。画像の無断転載はお控えください。

現在、採集した日本産アリ類(2014~)は160種(雌85種,雄45種)!!! 全てのアリをこの目に焼き付ける!!!

カテゴリ: アリ

uroko
ウロコアリの有翅女王(alate queen).
kitauroko
キタウロコアリの脱翅女王(dealate queen).
両者の違いは2年くらい前に書いた.女王はじっくり見ればけっこう違うが,ワーカーはほんとそっくり.
今回,この2種で想像していたことが証明されたようで嬉しい出来事があった.
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ご覧ください.
160spp
これまでに採集したアリの種数が,160種に到達しました.
なんとも微妙な区切りですが,ここから10種増やすまでに1年以上かかってしまいました.
150種を採集してから西表,神戸,秋田,高松とこれまで採集に行ったことのなかった地域に行きましたが,なかなか増やせませんでした…….
アリを採ることに苦言を呈されたこともありましたし,採集しかできないのに採集もできないのか…と悩んだ日もありましたが,アリは裏切りませんでした.

160種目は150種目と近い仲間で,憧れでもあったアリで決めることができました.
この種のゲットは採集に同行していただいた方のお力あってのもので,釣り堀採集でしたが自己採だから問題ナシ!
本当にありがとうございました.この場を借りて御礼申し上げます.
オスもメスもだいぶ増え,グループによってはオス,メスの検索表が作れるものも出てきました.
分類屋として,自分に出来ることでアプローチしていきたいです.
今後も採集頑張ります.
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前回の続きです.無駄な話が多いですが,よろしければ.

さて,トフシアリ(以下トフシ)とキイロヒメアリ(以下キイヒメ)は,前回書いたようにそれぞれトフシアリ属(Solenopsis)とヒメアリ属(Monomorium)と異なる属に属しています.
Solenopsis japonica解説用
両属の大きな違いは,触角先端棍棒部(膨らんだ部分)の節数の違いです.Solenopsisが2節,Monomoriumが3節です.そもそも触角の節数がそれぞれ10節,12節と異なります.
Monomorium triviale解説用
これだけでスパッと分けられるのですが,棍棒部の節数は慣れていないと何節か判断しにくいものです.アリを見慣れていないとどこまでが棍棒部ですか?という問題が発生します.検索表は無駄が省かれている故に専門外の人が持つ疑問には答えてくれないこともあります.
そこで,両種の形態を比較して他にも違いを見つけて節数だけに頼らないで済むようにしよう,というのが今回の趣旨です.
tohusikiihime-
左がトフシ,右がキイヒメです.似ていますね.

詳細に見ると別属ということもあり結構違いがあるので,目立つところだけ.
できるだけ他の虫屋さんでも分かるように作ったつもりですが無意識にバイアスがかかっているかもしれないので,分からないぞ,分かりにくいぞ,という場合はコメントやTwitter等でご指摘いただけると幸いです(そもそもアリ屋以外こんなちんけな虫捕まえねえよ!).綺麗なアリですよ.私は好きです.

顕微鏡かルーペ必須です.肉眼でパッと見て判断する方法は分かりません.ご存知の方がいらっしゃいましたらどうかご教示ください……


それでは全身の比較です.
Solenopsis japonica解説用Monomorium triviale解説用
まずおおまかな印象として,トフシの方が暗くキイヒメの方が明るい色をしています.データベースのキイヒメなんかはレモンみたいな色をしています.しかし,これは光の当たり具合や保存状態で変わるので,あくまで目安です.また,両種とも光沢がありますが,トフシは毛深く,キイヒメは毛が少なくツルツルです.トフシが毛深いのは顕微鏡で見るまで分かりませんでした.頭部,胸部,脚,腹柄,腹部に至るまで毛深いです.

次に頭部です.
トフシキイヒメ頭
頭部も他と同じく毛の数は有用です.また輪郭が違いますが,こういうのは並べないと分かりにくいです(とか言う割には"より"を連呼しています,すいません).

一番顕著な触角先端棍棒部の節数の違いです.トフシは2節でキイヒメは3節.この写真では分かりやすいですが,普通に顕微鏡で覗いているとよく分からないときがあります.特にキイヒメ.

複眼の大きさは全体比較のときにも載せますが,先端節の一つ前の節と比較すると分かりやすいです.トフシは明らかに小さく,キイヒメは大きいです.

全身の比較です.
トフシキイヒメ
並べると,トフシは複眼が小さいですね.また,形もトフシは円形に近く,キイヒメは楕円です.形と大きさが頭の片隅に残っていれば片方だけでも分かりそうです.

次に,後胸溝(中胸と後胸・前伸腹節の間の溝,凹み)の入り方です.後胸溝はアリの同定形質としてよく使われるもので,深く切れ込んでえぐれるもの,浅くうっすら切れ込むもの,ほぼ平坦で切れ込みを欠くものなど様々です.これを比較してみると,トフシは小さくちょこっと,キイヒメは大きく広く切れ込んでいます.比べてみて結構違うことに驚きました.

余談ですが,後胸溝はトフシアリ属内の検索で使用されており,南西諸島だけに住む近縁種のオキナワトフシアリ(S. tipuna)はトフシよりも深く切れ込みます.オキナワトフシは胸部の形だけで言うとむしろキイヒメとそっくりです.

話を戻して,この後胸溝を含めた胸部背縁はすごく分かりやすそうです.前胸前縁からラインを引いていって,最初は平坦な道を行っているけれど後胸にゴツンと当たるのがトフシ.グーっと山を越えるように大きくカーブして,一瞬平地があってもう一回山越えするのがキイヒメです.おお,分かりやすい(私にとっては).
トフシキイヒメ
これに関連して,中胸から後胸にかけて云々とよく分からないことが書いてありますが,トフシは胸部があまり高くなく,キイヒメは高いということが言いたかったようです.この両方の線を伸ばしていってできる角を見ると違いはありそうです.たしかミゾガシラアリの論文で使われていました.しかし,先述の後胸溝の切れ込み方も関係するのでいらなかったかもしれません.なぜ前胸ではなく中胸にしたかというと,中胸と後胸の最高点2点を結んで胸部背縁との間にできた隙間の大きさを比較したかったからです.明らかにキイヒメの方が大きいですね.

最後に,腹柄節前面の傾斜の違いです.トフシは柄部からゆるやかに丘部へ向かい,キイヒメは柄部と丘部の境がはっきりとしていて角度があります.また,丘部の長さもトフシは長く,キイヒメはほとんどありません.SolenopsisMonomoriumは腹柄節そっくりだなぁと思っていましたが,比べると意外と違いが出ました.


最後の方は文章ばかりになってしまいましたが,こんな感じです.これでもうトフシアリとキイロヒメアリを間違うことはないはずです.生体や,標本の状態によっては触角の節数を確認するのが困難な場合があります.書いていてほぼアリ屋向けになってしまいましたが,どっちか分からないというとき,もしかするとこれらの形質が役立つことがあるかもしれません.

参考文献
JADG, 2008. 日本産アリ類画像データベース.2017/11/07 アクセス.
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最近,とある事情があってキイロヒメアリ(Monomorium triviale)を探している.コロニーを見つけるのは私には至難の業で,ワーカーがちょこちょこ採れるだけでギブアップしてしまう.

先日採集に行った場所ではワーカーがいたのでTwitterにウロコアリたちに混ぜて(他にいいものがいなかったので)投稿したら,コメントをいただいた.
kiihime-
こういう下手な上に紛らわしい写真だった.何にでも見えてしまう気がする.

そのときふと思いつき検索をかけると,トフシアリ(Solenopsis japonica)とキイヒメが混同されている例をいくつか見かけた.確かに両者似ている.属も違うのに.データベースのキイヒメの解説ページでもトフシに似てるよ,と書いてある.私自身,両種が似ていることで不便していた時代があった(今も生態写真じゃ分からないときがある).

リンクにあるように土壌中に見つかる黄色くてちっこいフタフシアリの中で,トフシアリ,キイロヒメアリ,あとヒメオオズアリ(Pheidole pieli)(西南日本に限ると思います)はパッと見よく似ている.この内ヒメオオズは上のリンク先にも書いてあるように歩き方や背格好が違うのでまだいいとして,トフシとキイヒメは似ている.他人の空似だがそっくりだ.
tohusi
これはトフシ.棍棒部が2節かどうか…というのは肉眼では勿論のこと,写真をトリミングしても分からないことが多々ある.

私はちょっと暗い黄褐色だったらトフシ,綺麗な黄色からオレンジだったらキイヒメかな,とその場では判断しているがやはり顕微鏡がないと答えは出せない.

そこで,いい機会だと思って両種を比較してみることにした.後半へ続く(キートン山田風).
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最近,ケアリに向き合おうとしている.
この仲間は,同定が苦手な私にとって最難関のグループだ.
ケアリ属Lasiusはいくつかの亜属に分かれており,日本にはケアリ亜属(Lasius),キイロケアリ亜属(Cautolasius),アメイロケアリ亜属(Chthonolasius),クサアリ亜属(Dendrolasius)が生息している.そのどの亜属も結構同定が難しく,中でもケアリ亜属とクサアリ亜属はも~お手上げだ.
専門の方でもワーカーの標本を一頭渡されると難しいと聞く.

今までは運よく同定が可能な種ばかりを報告してきたが,いずれ向き合わなければいけない問題.同定済標本とにらめっこしながら,なんとかして覚えるしかない.

そして立ちはだかる関門.
Lasiussp
低山地の朽木から出てきたケアリ.大きさは2.37 mmとかなり小さめ.
Lasiussp-H
こんな顔.
主な計測値は,
Head Length: 0.65 mm Head Width: 0.60 mm
Eye Length: 0.18 mm  Eye Width: 0.15 mm
Scape Length: 0.69 mm Scape seta Count: 0
Terminal maxillary palpus Length: 0.17 mm
Pronotum Width: 0.41 mm Petiole Length: 0.08 mm
Petiole Width: 0.18 mm  Petiole Height: 0.21 mm
主な指標は
Cephalic index (HW/HL×100): 108 Eye index (EL/HW×100): 30
Scape index (SL/HW×100): 115 Petiole index (PetW/PetL×100): 240
Petiole height index (PetW/PetH×100): 280
まあ,1個体の計測値なんて何の足しにもならないけれど.

Yamauchi(1979)を参考に,可能性の低いものから除外していく.

カワラケ.まずない.毛が立ってなさすぎる.なおカワラケとトビケの違いは分からん模様.

ハヤシ.微妙だがこれもない.頭幅が小さく,SIが100を超えている.ハヤシは高くても100が限界.

ヒゲナガ.これも…たぶん違う.県内では高いところでしか見られないし(低くても700 mくらい),腹柄節はもっと先がとがっているはず.ヒゲナガのもう一つの特徴の小顎髭は複眼の最大幅の1.3倍を超えると記載にあるが,この個体は1.1でさほどmaxillary pulpusが長いわけでもない.……でもSIは同じくらい.

トビケ.分からない.PrWは範囲外,SIはトビケにしては高すぎる,触角柄節の立毛はトビケに比べて圧倒的に少ない,でも…...Yamauchi(1979)の前胸背板の幅と立毛の分布を示したグラフに…incipient coloniesという ものがある.これはそのままの意味で初期コロニーだ.初期コロニーにおいて生産される小さな個体は,前胸背板も小さく立毛も少ないのだ.そして……

ヒメトビケ.私は採ったことがない種だが,これも日本に住んでいる.トビケより小さく2~2.5 mm程度,触角柄節と前脚脛節に立毛がないか10本以下で,前胸背板の幅が0.70 mmを超えない.JADBのヒメトビケのページを見過ぎたせいで暗唱できるようになってしまった.画像はデータベースの写真しかないが,結構大事な腹柄節の側面が脚と重なって全く見えない.見ると触角は結構長く見え,SIは100を超えてそうだ.あとツヤツヤしてそう.

ここまで書いて,上の個体がヒメトビケの特徴とほとんど一致するのだが,上で述べたトビケの初期個体は,前胸背板が小さく立毛が少ない……あれ?同じでは?
現在,ヒメトビケとトビケ初期ワーカーは区別できないらしい.アメケとmeridionalis,ウロコとキタウロコのように実はワーカーだけでも同定できましたー,とかならいいのだが……もしかしたら専門家の間では鍵となる形質があるのかもしれないが,独学の自分の耳には届いていない.ちなみに,L. alienusとなっているがそれとは別種らしいです.よってSeifert(1992)のalienusの記載を読んで比較しても意味がない.

一度,同定済標本を見てみたいものだ.トビケの初期ワーカーを出すのはそう難しくはないから,来年初期ワーカーを標本にして(御免),上の個体ほかそのとき採れたやつらと比較してみよう.
ケアリ同定の道のりは遠い.

参考文献.
Seifert, B. 1992. A taxonomic revision of the Palaearctic members of the ant subgenus Lasius s.str. (Hymenoptera: Formicidae). Abh. Ber. Naturkundemus. Görlitz 66(5): 1-67.
Yamauchi, K. 1979. Taxonomical and ecological studies on the ant genus Lasius in Japan (Hymenoptera: Formicidae). I. Taxonomy. Sci. Rep. Fac. Educ. Gifu Univ. (Nat. Sci.) 6: 147-181.

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