遂にやってきた最終日.プランはばっちり.まず山,後片付けとスウィープ少々,次に浜,ネットサーフィンして見つけた恐らくヤツがいる場所,んでお昼ご飯,有名なお店でたらふく食う.車を返して飛行機乗ってサヨナラ.
まず山.後片付けを先に終え,成果物を瓶に詰める.時期を差し引けばなかなか良さそうだ.現場では見られなかったが,その一部をご紹介.
こっち見てる.ツツキノコムシに寄生するグループらしい.翅の模様がシャレオツでいい.
きちんとツツキノコも入ってた(違ったらすいません).科レベルで初採集.
レモン色をした綺麗なヒゲナガクロバチ.ヒゲナガクロバチは真っ黒で小さくて地味なハチ.なんと言えばいいだろう.蜂屋はこのハチに甲虫屋でいうヒメハナムシぐらいの愛情を注いでいる.そんなポジション.でもこんな綺麗なのもいたんだ,とビックリした.
いすまるす(Ismarus).ハエヤドリクロバチの一亜科とされていたが,近年は独立科Ismariidaeとして扱うことも多いみたい.ツルツルでハエヤドリクロバチとシリボソクロバチを足して2で割ったような姿をしている.カマバチ寄生らしい.確かにあのAnteonが死ぬほど採れたし納得.
その他コバチ.平ぺったいヒメコバチ?とナガコバチの雄.
その他コマユバチ.
Inostemmaも採れた.変なかたち.
ホソハネコバチ.このタイプのホソハネは電動ノコギリみたいでこれはこれで好き.
チビシデとかもいた.結構YPTには入る.
アリヅカはときどき入るが,こういうタイプは初めて見た.触角が可愛い.
クモ.こんな写真じゃ役に立たない.
さあそんな成果があったとはつゆ知らず,地面をじいっと見るとアリが歩いている.
フシナガムネボソ再び.どこにでもいるなコイツ.個人的に奄美らしい虫の代表になった.
網を出す前に,少しだけでも篩って抗う.
するとまた初採集が出た.ミナミヒメハリアリ(Ponera tamon)だ.
南西諸島に広く分布していて今まで行った石垣にも西表にもいる.でも見たことがなかった.脚黄色くて綺麗.幸先が良い.
気分が乗ったのでいい加減網を繰り出し木々を掬う.
ハナムグリハネカクシが入った.今はハナムグリヨツメハネカクシと言った方がいいんだろうか.まさに花に潜っていた.小さいんだけど拡大するとたしかにヨツメハネカクシ体型をしている.
かなーーり小さいガも入った.擦れてるけど白くて平たくて触角の根元が太い.レピチームに訊くと,ヒラタモグリガ科というガらしい.小さすぎるしほとんど採ってる人がいないようで,少しレピ屋さんたちに貢献できたみたい.
綺麗目のヒメバチも入った.見覚えがあるので調べてみるとHimertosomaというやつらしい.ニシキホソウスマルヒメバチ(Himertosoma kuslitzkii)だろう.
実はすごいハバチも採ったが貴重なのでここには上げない.またのちのち.
一通り掬ったところで網の中にアリが紛れ込んでるのを見た.それまでホソウメマツばかりだったのにこれは二回り小さい.見覚えのある形をしていて…シリアゲだ!シリアゲは奄美に来てまだ一頭も見ていなかった.どれどれ…と吸虫管を伸ばすもそこで体が硬直した.
………ッッ!
息を飲んだ.見たことがない.こんなやつ.奄美.答えは一つだ.
ハリナガシリアゲアリ(Crematogaster izanami).
このアリのことは知っているが何も知らない.データベースの個体のラベルに記載の住所は探してもよく分からなかった.ネット上に生きた姿はおろか奄美のアリの報告でも名前を見たことがなく,うかがい知れるのはデータベースのサイズ感も分からない茶色い標本.もしかして褐色をしてる?そんな想像をしていたハリナガは,漆黒のシリアゲアリだった.
ツヤのような光沢でいて小さくクボミのような姿.横から見ると確かに針長だった.
はぁ~……深いため息をついて自分を落ち着かせ,次なる目標を求めて足早にその場を後にした.
浜に来た.浜風は寒いが天気がいいので心地よい.ここはある種が採れたとあった広い住所の中で一番それらしい場所だった.多分ここだけど外したら時間的にもう間に合わない.
しかし探し方は分からない.いくら南国といえども季節は早春.出歩くアリは多くはない.とぼとぼ地面を見ながら歩いていたが…「これじゃない?」友人の声がした.
これだ.え,簡単に見つけられてしまった.センスなさすぎで死にます.
よく見るとたしかに歩いている.少し赤い黒いヤツ.
直角に落ちる前伸腹節は確実に本種であることを示していた.
ミヤコオオアリ(Camponotus friedae).宮古島の名を冠するが奄美にもいて,データベースの んぐっ とした標本画像でおなじみ.
オオアリの中ではかなり小さめで見た目MyrmamblysだがTanaemyrmexなんだとか.へぇ~と関心のない声を上げて読んでいたが,よく分からないオオアリというのは見ていてなんとなく感じた.
頭が大きい.どう見てもMyrmamblysやMyrmentomaなら小型個体のサイズしかないのに頭が大型個体並みに大きいのだ.そして頭の大きな個体しかいない.
巣穴も見つけた.シロアリを狩っている個体もいた.慌てふためく本種を見たが,ついぞ小型個体を見つけることはできなかった.
時間も押していたので一通り捕まえて,最終日ギリギリに目的の7割ぐらいを達成できた喜びと色んな疑問で頭の中がグルグルになりながら車を走らせた.もう昼だ.
お昼.ついに最後の飯タイムだ.ここは奄美で有名なお店.本能のママに鶏飯を食らう.うまい.この遠征中,採集に疲れ,運転に疲れた体に鶏飯が隅々まで染みわたる.ああ生きててよかった.
途中立ち寄った駐車場で荷造りを急いで済ませ,なんとか空港へ.少しギリギリだったがへまはしなかった.
もう終わりか.一週間もない遠征は本当にあっという間だ.初めての奄美.明確な目的がない中そこそこの成果をあげられた.次はいつ行けるのか.この頃はまたすぐ行けるだろうと高をくくっていた.今は簡単に行ける状況じゃない.一体こんな風にご当地の風土を噛みしめながら遠征調査を行えるのはいつなのか.今となってはこの頃の遠征事情が懐かしい.現実に目を向けなければいけないのと趣味の遠征など行かずにやることをやらねばという気持ちで別の筆を執るためにこの筆を置く.
…
……
………
と,忘れてはいけないことが一つ.
最後の最後まで二人で頑張るも,フトツツマグソは採れなかった.あんなに「行けば採れるよ~」みたいなノリで乗せられてしまったが,遂に一頭も目にすることはできなかった.ひどい!あんまりだ!あんなに慣れない材割りしたのにぃ!!!
かくして研究室ではフトツツマグソは幻の虫となり,採れないもの,存在しないものの例えとしてユニコーンやフェニックスと同格になったのであった.
まず山.後片付けを先に終え,成果物を瓶に詰める.時期を差し引けばなかなか良さそうだ.現場では見られなかったが,その一部をご紹介.
こっち見てる.ツツキノコムシに寄生するグループらしい.翅の模様がシャレオツでいい.
きちんとツツキノコも入ってた(違ったらすいません).科レベルで初採集.
レモン色をした綺麗なヒゲナガクロバチ.ヒゲナガクロバチは真っ黒で小さくて地味なハチ.なんと言えばいいだろう.蜂屋はこのハチに甲虫屋でいうヒメハナムシぐらいの愛情を注いでいる.そんなポジション.でもこんな綺麗なのもいたんだ,とビックリした.
いすまるす(Ismarus).ハエヤドリクロバチの一亜科とされていたが,近年は独立科Ismariidaeとして扱うことも多いみたい.ツルツルでハエヤドリクロバチとシリボソクロバチを足して2で割ったような姿をしている.カマバチ寄生らしい.確かにあのAnteonが死ぬほど採れたし納得.
その他コバチ.平ぺったいヒメコバチ?とナガコバチの雄.
その他コマユバチ.
Inostemmaも採れた.変なかたち.
ホソハネコバチ.このタイプのホソハネは電動ノコギリみたいでこれはこれで好き.
チビシデとかもいた.結構YPTには入る.
アリヅカはときどき入るが,こういうタイプは初めて見た.触角が可愛い.
クモ.こんな写真じゃ役に立たない.
さあそんな成果があったとはつゆ知らず,地面をじいっと見るとアリが歩いている.
フシナガムネボソ再び.どこにでもいるなコイツ.個人的に奄美らしい虫の代表になった.
網を出す前に,少しだけでも篩って抗う.
するとまた初採集が出た.ミナミヒメハリアリ(Ponera tamon)だ.
南西諸島に広く分布していて今まで行った石垣にも西表にもいる.でも見たことがなかった.脚黄色くて綺麗.幸先が良い.
気分が乗ったのでいい加減網を繰り出し木々を掬う.
ハナムグリハネカクシが入った.今はハナムグリヨツメハネカクシと言った方がいいんだろうか.まさに花に潜っていた.小さいんだけど拡大するとたしかにヨツメハネカクシ体型をしている.
かなーーり小さいガも入った.擦れてるけど白くて平たくて触角の根元が太い.レピチームに訊くと,ヒラタモグリガ科というガらしい.小さすぎるしほとんど採ってる人がいないようで,少しレピ屋さんたちに貢献できたみたい.
綺麗目のヒメバチも入った.見覚えがあるので調べてみるとHimertosomaというやつらしい.ニシキホソウスマルヒメバチ(Himertosoma kuslitzkii)だろう.
実はすごいハバチも採ったが貴重なのでここには上げない.またのちのち.
一通り掬ったところで網の中にアリが紛れ込んでるのを見た.それまでホソウメマツばかりだったのにこれは二回り小さい.見覚えのある形をしていて…シリアゲだ!シリアゲは奄美に来てまだ一頭も見ていなかった.どれどれ…と吸虫管を伸ばすもそこで体が硬直した.
………ッッ!
息を飲んだ.見たことがない.こんなやつ.奄美.答えは一つだ.
ハリナガシリアゲアリ(Crematogaster izanami).
このアリのことは知っているが何も知らない.データベースの個体のラベルに記載の住所は探してもよく分からなかった.ネット上に生きた姿はおろか奄美のアリの報告でも名前を見たことがなく,うかがい知れるのはデータベースのサイズ感も分からない茶色い標本.もしかして褐色をしてる?そんな想像をしていたハリナガは,漆黒のシリアゲアリだった.
ツヤのような光沢でいて小さくクボミのような姿.横から見ると確かに針長だった.
はぁ~……深いため息をついて自分を落ち着かせ,次なる目標を求めて足早にその場を後にした.
浜に来た.浜風は寒いが天気がいいので心地よい.ここはある種が採れたとあった広い住所の中で一番それらしい場所だった.多分ここだけど外したら時間的にもう間に合わない.
しかし探し方は分からない.いくら南国といえども季節は早春.出歩くアリは多くはない.とぼとぼ地面を見ながら歩いていたが…「これじゃない?」友人の声がした.
これだ.え,簡単に見つけられてしまった.センスなさすぎで死にます.
よく見るとたしかに歩いている.少し赤い黒いヤツ.
直角に落ちる前伸腹節は確実に本種であることを示していた.
ミヤコオオアリ(Camponotus friedae).宮古島の名を冠するが奄美にもいて,データベースの んぐっ とした標本画像でおなじみ.
オオアリの中ではかなり小さめで見た目MyrmamblysだがTanaemyrmexなんだとか.へぇ~と関心のない声を上げて読んでいたが,よく分からないオオアリというのは見ていてなんとなく感じた.
頭が大きい.どう見てもMyrmamblysやMyrmentomaなら小型個体のサイズしかないのに頭が大型個体並みに大きいのだ.そして頭の大きな個体しかいない.
巣穴も見つけた.シロアリを狩っている個体もいた.慌てふためく本種を見たが,ついぞ小型個体を見つけることはできなかった.
時間も押していたので一通り捕まえて,最終日ギリギリに目的の7割ぐらいを達成できた喜びと色んな疑問で頭の中がグルグルになりながら車を走らせた.もう昼だ.
お昼.ついに最後の飯タイムだ.ここは奄美で有名なお店.本能のママに鶏飯を食らう.うまい.この遠征中,採集に疲れ,運転に疲れた体に鶏飯が隅々まで染みわたる.ああ生きててよかった.
途中立ち寄った駐車場で荷造りを急いで済ませ,なんとか空港へ.少しギリギリだったがへまはしなかった.
もう終わりか.一週間もない遠征は本当にあっという間だ.初めての奄美.明確な目的がない中そこそこの成果をあげられた.次はいつ行けるのか.この頃はまたすぐ行けるだろうと高をくくっていた.今は簡単に行ける状況じゃない.一体こんな風にご当地の風土を噛みしめながら遠征調査を行えるのはいつなのか.今となってはこの頃の遠征事情が懐かしい.現実に目を向けなければいけないのと趣味の遠征など行かずにやることをやらねばという気持ちで別の筆を執るためにこの筆を置く.
…
……
………
と,忘れてはいけないことが一つ.
最後の最後まで二人で頑張るも,フトツツマグソは採れなかった.あんなに「行けば採れるよ~」みたいなノリで乗せられてしまったが,遂に一頭も目にすることはできなかった.ひどい!あんまりだ!あんなに慣れない材割りしたのにぃ!!!
かくして研究室ではフトツツマグソは幻の虫となり,採れないもの,存在しないものの例えとしてユニコーンやフェニックスと同格になったのであった.
お わ り