邑遊自適~好蟻性的俺~

昆虫(アリ・ハチ)を中心に綴っていく日記. コメントやリンク大歓迎です (リンクの際はご一報ください).本ブログに掲載の物事はほとんどが未発表のものであり,報文・論文への引用は固くお断りしております.引用が必要な際は状況により情報を提供いたしますので,メッセージにてご連絡くださいませ.画像の無断転載はお控えください.当ブログの管理人および記事に登場する人物は実在の人物とは基本的に無関係です.当ブログの運営に関する御意見はブログ内でのみ受け付けます.ご了承ください.

現在、自己採集した日本産アリ類(2014~)は197種(雌124種,雄75種)!!! 全てのアリをこの目に焼き付ける!!!

2018年05月

自分のすぐ近くというのは,なかなか訪れないものである.

お隣の山口県に行ってきた.そういえば,最後に山口で時間を過ごしたのは何年前だろう……福岡県民にとって山口県は,北九州から橋でスッと行けるおとなりさんである.天気予報で一緒に表示されるし,鹿児島宮崎よりよほど九州という認識がある(南九州を悪く言っているわけでは決してない).子どもの頃は,山口市はもちろん,萩市,美弥市などにも行った.家族旅行でも,学校行事でも,ちょっとした小旅行でワクワクしたものだ.

山口で一番訪れた場所は,福岡県のすぐとなり,本州の西端である下関市に違いない.
久々の下関は,すごく都会に見えた.マジマジと街並みを眺めたことはなかった気がする.
Pheidole indica
駅前の花壇の下に巣食っていたアリ,インドオオズアリ(Pheidole indica).放浪種.いろんな物が下関に運ばれてくるという証の一つでもある.

今回は,なんとも有難いことに先日知り合った虫屋さんに採集地まで案内していただき,一緒に採集を行うことになった.本州での採集は1年ぶりくらいか.

山で見かけた虫たち.
vafer
コケムシの一種(Cephennodes sp.).
Agathidium (Agathidium) cariniceps2
タマキノコ.ニセオオマルタマキノコ(Agathidium cariniceps)とご教示いただいた.篩いでAgathidium採ったの初めてでした.
kokekoke
これもコケムシ(Euconnus sp.).
Hypoponera beppin3
ベッピンニセハリアリ(Hypoponera beppin).福岡に帰ってきてからよく見るが,九州(とその近所)では多いんだろうな.
Kesigamusi
ひっくり返ったケシガムシ.これ自力で起き上がれないのではないだろうか(普通そんな状況にはならないんだろうけど).
Lordomyrma azumai
狩りをするアズマロゲリアアリミゾガシラアリ(Lordomyrma azumai).まあまあ少ないかな,という種.何かと縁がある.これからも沢山出会えそうだ.
Strumigenys lewisi
ウロコアリ(Strumigenys lewisi).アメイロアリの巣があったのと同じ石の下に営巣していた.けっこう同じ石をシェアして暮らしていることがあって,大したものがいないな…と思ってすぐ石を元に戻すのは賢い選択ではない.
Amblyopone silvestrii-2
今回の石起こし最大の成果.
Amblyopone silvestrii
ノコギリハリアリ(Stigmatomma silvestrii).嗚呼,なんて素晴らしいアリなのだろう.大学一年の冬に出会って以来,何度かこの姿を目に焼き付けてきたものの,コロニーが出たのは初の経験だった.ひっくり返した石の上で数匹がゆっくりのそのそと歩く姿は,うん,良い.今回だけで10個体ほど採集でき,総合採集個体数はダルマアリを越えた気がする.世間的な珍しさと,自分が出会える数は必ずしもイコールではない.このアリは世間的にはちょっと珍しい程度のアリだが,私にとってはずっと"結構珍しいアリ"くらいで居て欲しい.

アリは20種ほど採集できた.リターが良く,まだまだ珍しいものが見られそうな雰囲気だった.
二人で4時間ほど採集し,夜はとんかつ定食をいただいた.車内でもそうだったが,ご飯のときもアリ談義に花を咲かせ,とても楽しい時間を過ごせた.このような繋がりは大事にしなくては.

夜,バスで福岡へ.日帰りだったが,十分な成果.下関,いい街だった.また来たい(非常に雑な締め).
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ベトナム5日目.前の夜は吐きまくっていたので辛く,それによって眠れなかったので辛く,あと熱があって辛かった.
朝ごはんはスープとそれをかけて柔らかくした白飯のみ.大好きなファンタ(オレンジ味)も飲めず,水だけをがぶ飲み.
自分の体調は置いておいて,天気がめちゃくちゃ悪いので午前中は採集しないことに.本当に幸いであった.あのまま採集へ出かけていたらぶっ倒れていたかもしれない.私は睡眠不足解消のために昼ご飯の時間までたっぷり寝た.

お昼を宿舎付近で食べたか奥で食べたか記憶にない(多分宿舎のとこ).午後は皿の内容物回収へ.お二人と共に目ぼしいものだけ抜いていったが,酷い…….これだけかけてあの量か…というほど虫が入っていないし,手前のポイントはトビムシ地獄に遭い皿の半分以上が灰色をしていた.

多分この日はトラップの回収で一日が終わったのでは.とにかくずっと体調が悪くてよく覚えていない.


6日目.この日は一旦トラップの中身を入れ替え.
kiobitekina
回収途中に倒木についていたヤツ.綺麗な色,キオビオオキノコ的な雰囲気.

午後は宿舎に戻り,そこから行ける林道で3時間ほど採集.スウィープがメイン.
Tetraponera
ナガフシアリ(Tetraponera sp.).でかくて黒い.初採集だ.
butterfly
ちょうちょ.
Tapinoma melanocephalum-Vietnam
Tapinoma sp.少し気になっていたが,日本にいるアワテコヌカより黒い部分が多い気がする.日本で採ったやつは頭部だけ黒いのがほとんど.ここのは中体節まで色付いている.一応100%エタノールに何匹か入れた.
※近縁のT. indicumとの違いが分からないので,保留にします.こっちかもしれない…アタシってほんとバカ.
tigerbeetle
はんめう.下草の上にいっぱいとまってて,いっぱい入った.わざわざ自分で採らずとも皿に大量に入ってるのを午前中に見たので1匹だけ採った.
Tanaemyrmex
アメイロオオアリ亜属(Tanaemyrmex)の何か.昼間っから活動している.
しかもすごいことにこいつは跳ぶ.突くと1センチくらいジャンプする.素早く移動できそうだ.日本の種では私は見たことが無い.見た目はそんなに変わらないのに,こういう違いがあるのは面白い.よく見れば脚に違いがあるかもしれない.
2時間ほどスウィープしたのち,シフティングへ.良いハチが入ることを期待したがはずれ.アリもほとんど見なかった.

夜はやや復活し肉以外は食べられた.以下ライトの産物.この日は結構虫が集まっていた.
Calodromus
後脚の長いミツギリゾウムシ.Calodromusという属のようだ.もっと長いヤツもいる.
Blentidae
ミツギリゾウは他にも何頭か飛んできた.これは唯一採り逃したやつ.のんきに撮影などしている場合ではなかった(毎度やるやつ).
LIGHTnikuruGA
ガ.ノメイガ?
Tanaemyrmex-alate queens
アメイロオオアリ亜属の有翅女王.多分昼に見たやつと同じ.
haguruma
ハグルマヤママユ(Loepa sakaei).2年前に台湾でも見た.日本じゃまだ見たことない.
Dorylus-male
サスライアリ(Dorylus sp.)のオス.ソーセージフライ(sausage fly)とはよく言ったものだなと感じた.オスより働きアリが採りたかったが,オスもけっこう立派なアゴを持っている.
他にもヒメサスライアリ(Aenictus sp.)やトフシアリ(Solenopsis sp.),ヒラフシアリ(Technomyrmex sp.)のオスが採れた.ライトはこの日が一番楽しかった.

ライトで楽しんでしまったので夜寝るのが遅くなってしまった.やっと雨が止んだし,明日こそは晴れてくれ!と思い眠りにつくが…….
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3日目.朝起きてすぐ車に乗り移動.本日よりメインの調査地へ行くのだ.ワクワク,採りたい虫はいるかな~?
…という気持ちが一番に湧いて欲しかったのだが,ハノイは朝から雨雨,雨.調査地とは少し距離があるものの,天気への不安が拭えない.
なんとか雨降らずにいてくれ……という思いとは裏腹に,車窓から見える景色はどんどん酷くなっていく.3時間かけて目的地に到着.宿舎付近では少しマシになっていたものの,雨が降らなければいいというものではない.下草が雨で濡れてしまってはスウィーピングができない.仕方なく宿舎のまわりを散策.
ハチを探して下草を見つつ歩いていく.ふと地面に目をやると,歩く一行が.
Leptogenys sp2-2
Leptogeny sp2
これはハシリハリアリ(Leptogenys sp.)だ!日本にも生息しているが,見たことはなかった.日本にいるやつよりも多分ずっと大きい.大体2列くらいになって綺麗に歩いていた.

地面は素晴らしいフィールドだ.首も痛くならないし,すぐ虫のそばに行ける.
Oecophylla smaragdina
今度は肌色の種.よく見るといっぱいいる.これも見覚えがある.図鑑やテレビでもよく見た.日本にいない,東南アジア感満載のアリ.
Oecophylla smaragdina2
ツムギアリ(Oecophylla smaragdina)だ.噛まれると痛く,更に蟻酸を吹っ掛けられるらしい.どれどれ,蟻酸の味見だ…と4匹ほど吸ってみるが,全然なんともない.よく考えると,ツムギアリはどこぞの一族の次男よろしく"戦いは数"なアリ.今回は数が足りなかったようだ.

落ち葉をかき分けると,ハリアリチックな顔が.
Odontoponera sp
これはOdontoponeraだ!(和名忘れた) 前胸にちっちゃい刺が生えている.これも日本にいない属のアリだ.この辺のハリアリはちょっとした違いはあってもおおまかなフォルムや顔は一緒なので,"ああ,君ね"という落ち着いた感想を抱く.よく見るとかっこいい.
Anoplolepis gracilipes
これはどこにでもいたヤツ.日本でも,沖縄に行けばまず見ない人はいないだろう.アシナガキアリ(Anoplolepis gracilipes)だ.アフリカ原産という話の外来種.こういうのがいると,海外感が薄れる….

散歩はこのくらいにして,黄色いお皿を設置しに奥へ行く.一苦労してお皿を設置し,一応網を持って極わずかな虫を採って疲れたのでこの日は終わり.夕飯時にはやっと雨が止んだが,夜中にザーザーという嫌な音を聞きながら寝た.

4日目.
imomusi
朝から爽やかに芋虫が出迎えてくれたが,未明の雨のせいでこの日も下草はビショビショ.
とりあえずトラップから目ぼしいものを回収し,少し明るくなったので林道を網持ち出動.

…やっぱり草は湿っている.スウィープしても虫が入らない.そして網は重くなる.
Polyrhachis sp
こういうカッコいいのもたまに見られた.トゲアリの仲間(Polyrhachis sp.)だが,日本の種の1.5倍くらいあった.東南アジアにありがちな腹柄にちょこっとトゲがあるだけの種じゃなく,前胸に前向きのデカいトゲがある.かっけー!
osazo
大きい甲虫はやっぱりいいね.オサゾウムシの仲間.上にカニムシを乗っけている.これを見つけた後に見つけた黒くて少し小さめのオサゾウにもカニムシが乗っていた.ベトナムオサゾウ界のトレンドだろうか?

ヒルとマダニが3連続で網に入ったところで萎えて網をしまう.ザルとバットを取り出し,林縁にしゃがみ込む.
しばらく篩うが,あまり虫は入らない.悲しい….
Brachyponera foreging
東南アジアはシロアリが多い.シロアリの巣が出てきて萎えていると,同じ木に営巣していたであろうオオハリアリ属の何かが,バットの上でシロアリを狩っていた.この光景どっかで見た.
最後に,戻りながら落ち葉・土をシフターに乗せて歩きながら篩っていく.歩きながら片手で土を掬いつつもう片方の手で篩うのは結構滑稽であるが,この方法で日本未記録科の虫を採ったのだから,意外と馬鹿にできない.

少し深く土まで取って次の落葉層を求めて歩き出したとき,シフターを持つ手の平に激痛が.あまりに痛くてバットを放り出してしまった.ああ,勿体ない.これまで取ってきた土がパーだ.散らばった土の上を細い黒いのがちょこまか動いている.ははぁ,コイツらの仕業か.
Leptogenys sp
ハシリハリアリの一種だ.どうやら雨をしのいで休憩しているところをお邪魔してしまったらしい.彼女らの怒りを収め(アルコールに入れ)ながら,刺された手を見ると,わりあい中心部を刺されたのに人差し指全体が痺れて動かない.結局成果は放り出してしまうわ人差し指は動かないわで散々な終わり方をしてしまった.
……しかも夜中に食あたりで腹を下してしまい,本当に散々な一日の終わり方をした.もう思い出したくないくらい辛かった.
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アリからのメッセージ 今井弘民 著 1988 裳華房 176pp.

引っ越し中,廃棄処分になるところを引き取った.
80年代後半に出た本らしいが知らなかったので,通学の時間を使ってだいたい1週間くらいで読み終えた.
内容は海外調査の思い出と研究内容の説明,保守的なお年寄りに研究を認めてもらえない嘆きと気鋭の若手研究者への批判で構成されていた.差別用語の多さは時代のせいか.

自分が(僅かながらも)勉強してきた分野と全く違う畑の方のお話だったので,とても興味深かった.対象一つとっても,色んな捉え方があることを知った.手軽に読めるのも良かった.
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人生初ベトナム8日間の滞在記……


書くこと・書けることが少ないので2日ずつ.
1日目.前日に家に泊めた友人を見送り,バス→地下鉄で一人空港へ.
vietair
3時間半のフライトは快適で,睡眠不足だったこともありついつい寝てしまった.
降りたあと,機内にCHCに関する研究の総説を忘れたことに気付き鬱に.スマホに入れてあるから見られなくはないが,冊子とPDFでは読みやすさがダンチである.
(文献.秋野順治・山岡亮平,2012.情報化学物質としての機能面に着目した昆虫体表炭化水素研究—活性評価の重要性と抽出・分析手法における留意点—.日本応用動物昆虫学会誌,56 (4): 141-149.)

空港で待っていてくださったカウンターパートの研究者の方の車に乗せてもらい,ハノイ中心部にあるVAST(Vietnam Academy of Science and Technology)へ.ベトナムと日本では2時間の時差があり,日本では既に夕方の時間だったがベトナムはまだまだお昼真っ最中.時間があるのでその中にある博物館でいろいろ標本を見せてもらう.
VNMN
夜は町に繰り出し,外食.メニューがベトナム語表記しかなく,店員さんも全然英語が喋れなかったので一苦労した(人のことは言えない).
久々にお酒を飲み,いつものように真っ赤になる.綺麗なホテルの大きなベッドは心地よく,11時には寝ていたと思う.


2日目.8時にお迎えが来て出発.水田を見て回るがウンカはいないし当然それに関係するカッコいいやつもいない.記憶にあるのはキサピンを摘まんだことと畔からずり落ちて痣を作ったことくらい.
場所を移し,田舎の古民家へ.ここは当たりで,木造のお家に大量のセイボウがいた.これまでクロバネ,オオ,あとなんか丸くてツヤツヤした系の誰か,の3種を合計10頭も採ったことのなかった私ではあるが,ここで20近くのミドリandクロバネをゲット.
seibo-
セイボウってこんなに採れるんだ…採っても採っても次から次に現れてきた.

そしてフラフラ飛ぶ細長いハチを発見,Gasteruptionかな?と思ってネットに入れると,それはツノヤセバチだった.
Stephanidae
やっと巡り合えた.私の人生初の短報はアリでもヒメバチでもなくこのツノヤセバチの仲間だった.しかし自分の採集したものではなかったため,いつか採ってみせるぞ,と意気込んでいた…ものの採集に出かけても気配すらなく,同行者は皆採ったけど自分だけ採っていないこともあったほど.採れてよかった.
その後同種っぽいオスも採れ,一種の満足感を得た.だが,その満足感もズボンにしがみつく多数のノミたちによって一瞬にして消え失せた.この21世紀において,これほどノミにたかられた日本人はそう多くないのでは?
Pulex
これまで採集したことがなく,目にする機会も多くなさそうなので全部回収した.

その後別の場所に移ったが最初のとこは超えられず,そこそこで終了.
以下見かけた虫たち(一部).
utiwa
日本にいるやつによく似たウチワヤンマ.持ってきた貴重な三角紙2枚の内1枚を1回目の採集で消費してしまった.
chrysome
ファンシーな模様のハムシ.数は多い.
Crematogaster sp
シリアゲアリ.訳あって100エタにドボン.お役に立てればいいが…
Aspidomorpha
テントウムシを思わせる模様のジンガサハムシ.けっこうでかい.


雨がぱらついていて,少し不安だがなんとかもってくれた.最初の採集は時間が短く,超楽しい!と思える採集ではなかったが,翌日移動する本命の採集地ではきっと素晴らしい虫たちが待っているはず!
天気さえ良ければな……明日も降らないといいなぁ,と思いながら寝た.
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