邑遊自適~好蟻性的俺~

昆虫(アリ・ハチ)を中心に綴っていく日記. コメントやリンク大歓迎です (リンクの際はご一報ください).本ブログに掲載の物事はほとんどが未発表のものであり,報文・論文への引用は固くお断りしております.引用が必要な際は状況により情報を提供いたしますので,メッセージにてご連絡くださいませ.画像の無断転載はお控えください.当ブログの管理人および記事に登場する人物は実在の人物とは基本的に無関係です.当ブログの運営に関する御意見はブログ内でのみ受け付けます.ご了承ください.

現在、自己採集した日本産アリ類(2014~)は197種(雌124種,雄75種)!!! 全てのアリをこの目に焼き付ける!!!

2017年07月

研究室の友人と2人で8月のイベントに向けて展示用の虫たちを採集しに行った。手っ取り早いライトトラップで日が暮れたら即開始!…のはずだったのだが。点灯した瞬間に電気が切れた。調子に乗って予備のガソリンを持って来なかったらこれだよ。結局一度下山してガソスタに行き、雑談しながら山に登って開始…あたりはもう既に真っ暗で完全に出遅れた。もしこれが頂上付近まで車で行けない場所だったら死んでた。
以下、訪れた虫たち。
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ムラサキメンガタヒメバチ(Metopius dissectorius)。ライトトラップではお馴染みのヒメバチ。ライトに来るのはオスばかりで、メスはマレーゼでしか採ったことがない。
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トホシカメムシ(Lelia decempunctata)。初採集だった。つい数日前に後輩のインロー箱にこれが入っていたのを見て、いいな~とか言っていた気がする。大きくて綺麗な虫だ。単体で撮ったつもりが、上にコガネコバチみたいなのが乗っていた。
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センノカミキリ(Acalolepta luxuriosa)。私はセンノ"キ"カミキリと覚えていたが、大手検索エンジンによるとセンノカミキリの方がメジャーらしい。飛んできたときは前胸のダニが模様に見えて"なんだこのカミキリ!?"となったがよくよく見ればこの庶民派ヨコヤマだった。
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アオジョウカイ(Themus cyanipennis)がガを食べていた。ジョウカイは肉食だとは知っていたが、実際に虫を食べてる姿を見たのは初めてだった。
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今回一番嬉しかったのはこれ。じゃ~ん!トラニウス!
トラフホソバネカミキリ(Thranius variegatus variegatus)。elytraをケチってる系だけれどこの形は許されるでしょ。ハルニレとかに来るんだっけ、ライトにもやってくるんだなあ。Thanius variegatus
大学1年のときに行った石垣島で友人がヤエヤマホソバネカミキリ(T. multinotatus latipennis) を採っていたのを見ていいな~とは思っていたものの、自分の採集法ではかすりもしない虫だと思っていた。運が良かった。つくづくライトは運だ。


他の虫たち
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箱に使う分は十分集まったと思う。オオツノトンボやヤマトクロスジヘビトンボを展翅すれば場所をとれるはず(せこい)。ハチはすこぶる微妙で、目新しいものはなし。Cylloceriaが入っていたのとタマヌキケンヒメバチ(Jezarotes tamanukii)であまりに遅すぎた日本産ケンヒメバチ童貞を捨てたことくらいか(海外では台湾で採っている)。ただ、どちらも珍しいものとはとても言えない。ううむ、ヒメバチはなんとなく義務感に駆られて結果が出せない。まあ採集が下手なのが悪いのだが。

5月の日中の採集も含めて2回、この山での採集で得られた標本は、8月のイベントで一般に公開される。お時間があればぜひいらしてください。
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キバラハキリバチ(Megachile xanthothrix)。海辺のハマゴウにきていた。名前の通りの黄色い腹部の毛がとても美しい。飛んでいても一目瞭然だ。これを採ったときはこの場所には別件で訪れていたのだが、網を持ってきて正解だった。香川県で初採集して以来の再会。どちらも海の近くで採っているので、これを見ると青い海と白い砂浜を思い出す。
県内では先輩が採っていた個体を見たことがあるが、私はこれが初めて。他の県ではRDBに載るなど数を減らしている種類。この綺麗なハチが、いつまでも見られるように保全していかなくてはならない。
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世間がヒアリ(Solenopsis invicta)やアカカミアリ(S. geminata)の侵入で揺れる中、小さく、人を刺すこともなく、目録に載っててもさしてコメントもされないような外来種のアリが四国に侵入したことが報告された。
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英語で"ghost ant"と呼ばれている、アワテコヌカアリ(Tapinoma melanocephalum)。1.5mmと極小で動きは超素早く、他のアリだとサクラアリ(Paraparatrechina sakurae)にとても似ている。
似ているアリがいるとは言うが、頭は黒、他の部分は淡い黄色という独特のカラーリング。日本に棲む他のアリとはだいぶ雰囲気が違う。それもそのはず、このアリは元々日本には生息していなかった種類。
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しかしヒアリやアルゼンチンアリ(Linepithema humile)が南米原産とはっきり分かっているのに対し、このアリは世界に広がり過ぎて原産地が分からないという。そのくらい全世界で見られるアリだが、他の外来アリと比べそんなに問題にはなっていない。家屋害虫になるくらいには建物に侵入したり人間の生活圏に入り込みはするらしいが、特に刺すわけでもない。これなら同じ家屋害虫のヒメアリ(Monomorium intrudens)の方がよっぽど迷惑だ。そんなこんなで体色と比べて地味な扱いのアリ。

暖かい地域に多いアリなので、日本では沖縄や九州南部、あとは植物園だとか都会の建物の中だとかで見つかっていた。
このブログでも、沖縄で採集した本種の写真を上げている(石垣島採集記②参照)。
Tapinoma melanocephalum-H
頭部が黒いので、遠目からだと複眼が見えにくくなんだかのっぺらぼうのようで不気味な感じ(そもそも肉眼だと二色の粒が動いてるくらいにしか分からないが)。
melanocephalum-d
今回報告されたのは、大学のキャンパス。外来アリの多くは初め物流の多い港や空港で見られることが多いが、このような研究機関でも、様々なモノが運ばれる。今回はそれについてきたんだろう。自分も遠方に採集に行き、そこで使用した採集道具を持ち帰ってからも使うことは当然ある。そのとき、こんな幽霊を一緒に持って帰らないようにしなければ。

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以前オナガバチを採った場所をまた訪れてみた(虫の日参照)。前回は見られなかった、オナガバチのオスがわらわらと集まっていた(種類が分からないので修正しました)。これは羽化するメスを待ち受けているらしい。
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しばらくするとメスが飛んできた。これはオオホシオナガ(Megarhyssa praecellens)で大丈夫だろう。前回の個体よりもだいぶ大きかった。個体差大きいんだなあ…。

今では発生地が分かっているので当然のように出会えているが、これまで見ることすら叶わなかったオナガバチ。網に入れるまでは最高のハチだ。
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この日の夜はとてもむし暑く、それでいて風は全く吹いていませんでした。こんなコンディションの初夏の夜には、いくつかのアリが結婚飛行を行います。ベストなタイミングを逃す手はない。よし、出かけよう。
決心したのが夜中の1時。正直行くか迷いましたが、行かずに後悔するより行って後悔しろ、と何かが叫んだのでヘッドライトと吸虫管を手に、自転車のペダルをこぎ始めました。

5分ほどで目的地に到着。真夜中なので灯りは少なく、ポツポツと等距離に置かれた電灯に虫が集まっています。
電灯の光だけでは弱いので、持ってきたライトで照らします。
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きてるきてる。ハヤシケアリ(Lasius hayashi)です。オスは見られませんでしたが、有翅女王はかなりの数見られました。たまに写真のように淑女の集まりを開いているものもいます。
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これはアシナガアリ(Aphaenogaster famelica)の女王。実は翅があるものは初採集でした。ハヤシケアリより大きく立体的です。この場所には似た姿のヤマトアシナガアリも生息していますが、結婚飛行の時期がアシナガよりもだいぶ遅い(9月頃)ので判別できます。
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ハヤシクロヤマアリ(Formica hayashi)。夜でもおかまいなしに活動しています。アリは日中活動して夜は巣の中でひっそり…というイメージがなんとなくありますが、わりと日中活発に活動している種も元気にうろついています。うろついて何をしているかというと…
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これです。飛行があるということは、大量の餌が現れるということ。これはクロオオアリ(Camponotus japonicus)ですが、電灯の周りをうろついて、ハヤシケアリの女王を捕らえました。女王は栄養満点でしょうね。
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こちらではキイロオオシワアリ(Tetramorium nipponense)が同じくハヤシケアリの女王を襲っていました。たくさんの羽アリが巣を作るために飛び立ちますが、巣作りのスタートラインに立つことができる個体でさえ極少数です。
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さきほどアリは昼も夜もかまわず活動する、と書きましたが、夜の方が活発な種もいます。このキイロオオシワアリやキイロシリアゲアリ(Crematogaster osakensis)は、日中よりも多くの個体が、日中よりも目立つところを活発に歩いています。2種とも夜行性とは言われていない(はず)ですが、なんとなく夜の方が元気な気がします。実際に夜行性が知られる種としては、ミカドオオアリ(Camponotus kiusiuensis)やアメイロオオアリ(C. devestivus)などがいます。これらの種類を比較するといくつか共通点が見つかってきます。パソコンに向かって論文を読みながら考えるのも良いですが、こうやって実際のフィールドで観察したことからああだこうだ考えるのも楽しいものです。

結局ハヤシケアリとアシナガアリ、それとオオハリアリ(Brachyponera chinensis)の3種しか飛行を確認できませんでしたが、久しぶりの夜の蟻探しに、必死にアリを探していたころの感覚を思い出しました。頑張らないと。
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