採集場所は大学から少し(?)離れた所で、自転車で坂道を登った後、林の中に流れる沢に沿って歩き、そのちょっと脇を登って現場へ。
これから採集…まず採集場所にたどり着くまでにヘトヘトになっているのに。まだまだ驚きは続きます。
こんなとこで採集……肩で息をする我々は、なぜか斜面に立っています。リュックから手鍬を取り出し、ヘッドライトをONして、斜面に向かって刃を立て始めました。どんどん掘っていきます。人入れますこれ。
ここまでして採れる虫とは………わずか数mmの飴色に輝く甲虫。
?????一般人に理解を求めるのはもはや野暮、虫屋からもため息が漏れる採集、チビゴミ掘り。
洞窟や地下浅層(この言葉がアリの図鑑で見る林床に近い感じがして好き)に住むメクラチビゴミムシを採集するのです。
話には聞いていましたが、すごい。これが究極の採集か。今回先輩からお誘いがなければ、こんな素晴らしい体験できずに学生終わってたかもしれません。
私はアリ屋(研究対象はハチ)なので、地中からアリや珍しいハチが出てくるという話を耳にし、同行することに。採集自体を楽しむことを目標に臨みました。
斜面に鍬で穴を掘っていきますが、意外と簡単に掘れ、あっという間に地下10cm、地下30cm、地下50cm。そこからは横に掘り進め、あっという間に数m掘れてしまいました。私は初めてで何も分からず、気が付けば足場に土が溜まって垂直の深さはあまりなくなっていましたが、最終的に5mくらいは掘れました。
地下には、普段目にすることのできない生き物がたくさん。
暗い場所で酷い写真ばかり…。カニムシ。地下のカニムシはカッコイイやつがいくつもいて、"掘り"に行った先輩から見せてもらってうおぉー!となったことがあります。でもコレはその辺で見るヤツにも見えるけど…。
カニムシはそんなに出なかったものの、掘って出てくるのはヤスデかムカデかトビムシかハサミコムシで、昆虫(外顎綱)出てこねえ!!!と2人で嘆いていた。
チャイロホソヒラタゴミムシ。ゴミムシやハネカクシは出てきたもののその数は少なかった。先輩は"今日は全然虫がいない"と仰っていて、いるときは沢山出るようだ。
ゾウムシの幼虫。足がない。これを見るたびにおいしそうだなあ…と思う。
掘るとアリもけっこう出てきた。一番多いのがアシナガ系。コロニーがいくつも出てきた。ウロコアリ(Strumigenys lewisi)やカドフシアリ(Myrmecina nipponica)やアメイロアリ(Nylanderia flavipes)も出てきたが、これらは多分リターから落っこちてきたり浅いとこにいるやつがポロッと落ちてきたんだと思う。地下深くに住むというムカシアリ(Leptanilla)出てこないかなと期待を寄せるも、やっぱりそんなに甘くない。
こんなのも見つかりました。ミゾガシラアリ(Lordomyrma azumai)不思議な形をした珍種(キリッとした眉の希少種参照)。オスがいることから成熟したコロニーであることが分かるが、個体数は少ない。冬だから?そもそも少ない?いろいろ考えてしまう。オスは結構貴重なのでは。
女王もいた(写真中央)。よって、お持ち帰りすることに。
こんなのも。アリタケってやつだろうか。初めて見ました。
このカッコいいシルエットは?
Lathrobium sp.。地下浅層に住むハネカクシで、各地で種分化しているらしいです。独特の形をしていて、採りたいと思っていたので採れたときは喜んで写真を撮りましたが、ろくな写真がない上に気付いたら土の中に消えていってました…。先輩のご厚意によりいただきなんとか手元に一つは確保。
結果的にチビゴミは採れなかった(採集のうまい先輩すら1つも採れなかったのは意外)のですが、初体験で、大興奮の一日でした。
先輩とは今まで何度も採集に行き、この時期まで連れてってもらって本当に感謝です。来年度からいろいろ変わってくな…と頭の片隅で考えながら、ガンダムWの"思春期を殺した少年の翼"を2人で口ずさんで自転車を置いた場までの距離を歩きました。
帰りは行きの地獄と一変し下り坂だけで風が気持ちよかったのですが、吹かれ過ぎたのか、翌日風邪をひいてしまいました。