まずは花を見てハチを掬おうと思ったが…キマダラハナバチ(Nomada)しかいない。2種か3種はいたかな…とりあえず採集。
この場所は坂になっていて登るのが少ししんどいので普段は入口をうろうろしているのだが、久しぶりに上に登ってみる。以前マナコハリアリ(Ponera kohmoku)が採れた場所で篩う。
採れた。マナコハリアリだ。普通種のテラニシハリアリ(P. scabra)に似ているが、腹柄節の後縁がテラニシは上に弧を描くのに対しマナコは下にゆるやかに弧を描く。また、テラニシの複眼は顕微鏡で見ても小さくてよく見えないが、マナコは顕微鏡で見るとはっきり分かる。テラニシと思って撮影していないのか、やや珍しいのか分からないがネット上や文献に画像が少ない。
その後、人通りの多い林道でひっそりと篩う。すると…
カギバラアリだ!この場所に生息するのは目録で知っていたが、ここは勿論、愛媛でカギバラアリを採集したのは初めてだった。嬉しくて小さくガッツポーズ。鉤腹状に曲がった腹部に節足動物の卵を抱え、餌とする変わったアリだ。3mmとこの手のアリにしては大きいのもポイントが高い。
顕微鏡で見てイトウカギバラアリ(Proceratium itoi)と同定した。この属は種小名がまんまだから覚えやすい。
歩いたり篩っている最中に寄ってくるカやハエを振り払うこと(あとアミメとラシウスとブラキばかり出てくることでも)で疲れてきて帰りたくなったが、今まで採集したことのない場所で何かしらいいものを捕まえるために、気力で登る。照葉樹から広葉樹の林に変わったところで、篩う。登城客などおかまいなし、道で堂々と篩う。アミメアリ、ケアリ、オオハリアリ…。またこいつらか……と思ってため息をついたとき、何か小さな赤いものが動いた。初めて見たが、一目でこれだと分かった。先ほど採ったカギバラアリを縮小したようなこのアリは…!!!
太い触覚、赤い体、曲がった腹部。間違いない、ダルマアリ(Discothyrea sauteri)だ!あまりの嬉しさに、「ダルマ!!ダルマ!!!」と叫んでしまった。登城客が聞けば意味不明だろう。それほど感動したのだ。ダルマアリはカギバラアリと同じカギバラアリ亜科(Proceratiinae)のアリで、カギバラアリと同じような食生活を送っている。2mmという小さな体ながら、存在感を感じさせるアリだ。
ずんぐりむっくりな体型に太く短い触覚がキュートな、大好きなアリ、そして生きている姿を見たかったアリだ。このアリは県内では見つかっていた(アリ調査参照)が、この場所での記録は初である。憧れの虫を見ることができたとき、最高の気分を味わえる。これだから昆虫採集はやめられない。