ベトナム7日目.この日はなんとか曇りで済み,とりあえず朝から採集が行えて一安心.
前日もそんなに雨は降らなかったので,一応スウィープも出来そうだ.その辺の草葉を見て水っ気を確認.
Technomyrmex brunneus
なんかいっぱいいる.アシジロヒラフシアリ(Technomyrmex brunneus).沖縄とか鹿児島にも侵入している種.あちこちに長蛇の列を作っている熱帯の普通種.
Polyrhachis demangei
おや?これは新顔.ツヤツヤしたトゲアリだ.多分Polyrhachis demangei.トゲアリのくせに,胸にはトゲがなく,腹部も丸いので柔らかい印象だ.一匹採れてなんだか嬉しくなっていたら,あちこちを歩いている.ツヤツヤがいっぱいでツヤッツヤ.

先生と先輩は,花を掬ってらっしゃる(物珍しいのだろう,観光客がまばらに寄ってきていた).しかし,私は長竿を持ってこなかったので,低いところをスカスカ掬うしかないのであった.ケチらず持ってきておけば……
Midorikamikiri Vietnam
しかし,それでもなんだかんだ虫は入るもの.ミドリカミキリ的なミドリカミキリだ.恥ずかしながら,ミドリカミキリは日本でも採ったことがなかった.初採集である.
Tenthredo sp.
ハバチも入った.先輩が採られたでかくてカッコいいのとはまた違った趣がある.日本のハチガタハバチに似ている.そして擬態するアシナガバチも異なるのか,なんとなくベトナムナイズドされている気がした.


私がこんな奴らで喜んでいる隣で,先生と先輩は大量のツチスガリをゲットしていた.私はその後は小さいハナバチしか採れず,そこそこでスウィープに切り替える.

やっぱりスウィープはいい.ヒメバチも,コマユバチも,温かく迎え入れてくれる.段々テンションが上がってきたところで,丈の低い木をスウィープすると,黒いアリが入った.おお!これは.
Cataulacus granulatus
先日網に入れながら闇に消えていって採り損ねた,カブトアリではないか!これは恐らくCataulacus granulatusだ.珍しい種ではないが,私にとっては図鑑の中の虫だったのでかなり嬉しかった.この形,素晴らしいじゃないですか.
このテンションそのままに,けっこう良さげなヒメバチとかヒメバチとか採っていく.毒瓶の中は,虫でいっぱいだ.幸せ...…と,しばし毒瓶を眺めていると,なんか太っちょなハチを発見.はて,こんなの採ってたんだ.ん……?
Hayatosema initiator
おお?んんん?これはもしや,ア リ ヤ ド リ コ バ チ ではなかろうか?
コイツは, "好蟻性のハチ好きです,やってます"とかぬかしておいて,一度も採集したことのなかったアリヤドリコバチEucharitidaeではなかろうか…?ついに,私は捕まえたのだ…!やった…!静かに喜び,静かに興奮した.
Hayatosema initiator2
帰国後観察し,自信はないが,Hayatosema属であろうと心の中で同定した.この属は日本にもいるが(西表島),記録が示された和文の文献もWebサイトも見たことはない.この属は,オオズアリに寄生するらしい.オオズアリ属Pheidoleは熱帯で多様性が高いグループなので,そりゃそいつに寄生するヤツも現れるだろうな.
とにかく,初めてアリヤドリコバチを捕まえた興奮でお腹いっぱい.もういい時間なので適当にドロバチを捕まえて,昼ご飯を待った.

お昼を済ませた後,適当にドロバチを捕まえて,採集再開.お腹いっぱいであんまり採集してなかった.
Leptogenys foreging
ハシリハリアリっぽいアリが,みんなでミミズを抱えて運んでいる.結構速く,あっという間にコンクリと地面の隙間に入っていった.

やっぱり花への未練が断ち切れず,私の短い網でも届く花に狙いを定め,ちっちゃいハチたちを採っていく.
そこにブーンという羽音とともに大きな黒い物体が.もたつきながらもなんとか網に入れる.
AoiKumabati
青い.蒼い.碧い.綺麗なクマバチだ….こんなクマバチの存在は,よくある綺麗な虫の展示で見て知っていたが,生きて動いているところは,宝石が動いているようだ.しばし動くクマバチを眺める.

しばらくすると先生たちが花掬いから帰ってきて,採集終了.トラップを全回収し,この日は新たな宿へ向かう.
YPT
使った後は綺麗に.数百枚の黄色い皿を,丁寧に洗っていく.少しの汚れも気になるのでかなり丁寧に洗っていたが,作業が遅すぎて日が暮れてしまった.しかもずっと水に手を突っ込んでいたので,かなり冷えた.

この日は楽しかった.ベトナムの宿で過ごす最後の夜.のんびりソーティングして過ごした.明日は最終日,とにかく楽しもう,そう思って眠りに付いた.この日は久々に一つのベッドを広々使えた.