GWが終わった次の日、以前から採集に行こうよ~と言っていた友人と少し遠出して高い山へ行くことに。
友人の軽トラに乗っけてもらい、いざ出発。彼は地元愛媛の出身で、目的の山にも遠足やイベントで何度も登ったとのこと。うちの大学では地元の人間が少なく、四国に広げても多くはない。よって地元の情報は実はあんまり聞かないのだ。この3年間、採集であちこち行く関係で(よそ者にしては)いろんな場所を知ったが、なかなか深くまでは知るのは難しい。そういう意味で地元の人の話というのは貴重であり、とても興味をそそられる。駐車場に着くまでの間、県内の事情、地元の人の考え、自身の思い出など、たくさん話を訊いた。

さて、到着。早速降りて戦闘開始。友人はあまり採集に慣れていないので、少しレクチャー(になってればいいが)しつつ登り始める。
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早速アリの姿。ここは1000m弱ある山なので、もちろんいる虫も山の虫になる。ムネアカオオアリ(Camponotus obscuripes)がアブラムシに群がっている。県内では山に行かないと出会えないが、山に行けば大抵出会える。大型な上に赤い部分が多い体をしておりとても綺麗なアリだ。県内ではよく似た種にニシムネ(C. hemichlaena)がいるが、前胸の色で見分けられる。とは言え、この写真でも下の個体のように前胸がやや黒ずんだ個体もおり、はっきりと区別するのは結構難しい。最近はほとんど山に行っていなかったので、ムネアカを見られただけでも少しテンションが上がってしまった。もっと採集行かなきゃなあ。
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今度はムネアカと比べると小さなオオアリ。このサイズだとウメマツオオアリ(C. vitiosus)が最も普通だが、これは違う。ヤマヨツボシオオアリ(C. yamaokai)だ。写真では、というか採集したときは全然四つ星が見えなかったが、標本にしたらはっきりと確認できた。実は、本種は県内では今回が初採集だった。他の県では採集していたし、この山で他の人が採っているのも確認していたので、やっと採れた、という感じだった。
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葉っぱには、ムネボソの一種が居た。すぐ隣の葉をヒメムネボソ(Temnothorax arimensis)の女王が歩いていたが、うーん、なんか違うような。以前もこんな色の微妙なムネボソを採集しているが、まだ分からないでいる。この属難しいや。
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葉っぱの上といえば、こんなのもいた。名前を先輩から聞いたが、例によって忘れた。
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タマムシはこれとシロオビナカボソ(Coraebus quadriundulatus)の2種類採れた。

この山ではこれまでほとんどスイープをしたことがなかったので、採れる虫はけっこう新顔が多かった。
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ハチはヒメバチを中心に、ハバチもよく採れた。写真は撮りそこねたが、個人的に尾っぽの長い素敵なEphialtiniもいくつか採れて満足。でも先日の採集よりは少なかったなあ。

しばらく歩いていい感じにお腹が空いたので、一休みして昼ごはんに。座っておにぎりにかぶりついていると、目の前をハネカクシが歩いてたり、マルハナバチやオオセンチがブーンと飛んでいったり、じっとしているのに、虫たちの息吹を感じる。素晴らしい。そんなことを思っていると、友人の水筒に虫が飛んできてぶつかって落ちた。
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!!
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!!!
ベニヒラタ!ベニヒラタ(Cucujus coccinatus)だ!この山では数が多いらしく、同行した人はみんな採っていたが、土の前にじっとしている私には縁のない虫だった。その姿と色で目を引く、図鑑ではよく見た虫。ようやく私の前にも現れたか…と感激した。よく見ると友人の水筒の色は黒と赤で、ベニヒラタと同じ色。「これ置いといたら飛んでくるんじゃ?笑」とかアホみたいなことを言いつつ、大事に毒ビンにしまった。後日、きちんとダニを取って展足した。この虫を採ったことを喜んで報告しても皆"えぇ…こんな虫…ルリヒラタならまだしも…"と共感してはもらえなかったが、私は嬉しかったのだ。それでいいのだ。

のんびりと2人で登りながらしゃべりながらの採集。普段は一人で採集する方がマイペースでいいと思うタイプだが、こんな採集ならいいな、と思えた。
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話しているうちに頂上へ。そんなに天気は良くはなく遠くはぼんやりとしか見えなかったが、結構高くまできたもんだ。見える街は今では合併して大きな市の一部になった友人の故郷。ここでも少し思い出話を聞いた。そういえば、私にも故郷を見渡して思い出話のできる山があるだろうか。あるっちゃあるが、あんまり登ったことがないので感慨にふけることはできないような気もする。そういう意味では、ないのかもしれない。

いい時間なので、降りつつ、前回の採集の勢いそのままに土を集めていく。結果は微妙だったが、一応まあまあな虫を。
04s
カクホソカタのなにか。同じようなのを採った記憶があるが、果たしてこの山だっただろうか。この仲間はいい形をしている。
58s
ミゾガシラアリ(Lordomyrma azumai)。わりと珍しいけど、この山ではコンスタントに採れている。いいアリであることには違いない。

一通り用事を済ませたが時間が余っていたので、シフティング。
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倒木内のフレークを篩うと、見慣れない甲虫が。なんだこれ!?と驚くも、よく見ると馴染みのある形をしていた。ヒシカミキリ(Microlera ptinoides)だった。しかし、シフティングでカミキリムシが落ちたのは初めての経験。そもそもシフターの網の目を通るサイズのカミキリ自体相当少ないはずだ。

最後にカドフシ(Mymecina nipponica)とアリヅカムシを捕まえ、撤収。うん、最後の採集としては上々だった。実は、これから数か月個人的に非常に忙しくなるのでしばらく採集は控えようと思い、この採集を落ち着くまでの最後のものと決めていた。次に思いっきり網を振れる頃には日もだいぶ短くなっているだろうなあ…


P.S. 帰りに友人宅に寄り、なんとタケノコご飯をいただいてしまった。大好物である。3食分もいただき、本当にありがとうございました。美味しくいただきました。ホント、足を向けて寝られないな。ありがとう。